渋温泉食堂 gonkiの岸田陽一さんを講師に迎え、研修を行いました。
湯田川という地域において「食」をどのように捉え、これからの世代にを残すことができるのか。また、観光客のみなさまへ、どのような価値を提供し、何を伝えていけば良いのか?
こうした大きな問いについて、向き合わなければいけない時期になってきたのかもしれません。そんな問いに対するヒントを得るための研修第二弾として、長野県で「渋温泉食堂gonki」を営む岸田陽一さんを講師にお迎えしました。
⚫︎講師紹介
岸田陽一さん
フランス東部・アルザス地方の有名レストランで修業した後、2013年に妻の里佳子さんの実家がある長野県内に移住。大阪や東京などの三ツ星レストランでキャリアを積む中、自らの店舗を構える一番最適な環境を探し求める。2020年1月、山ノ内町に夫婦でレストラン「渋温泉食堂gonki」をオープン。昼夜ともに6600円のコース料理を提供している。
⚫︎研修について
本研修は、地域住民と外部の方が交わり、新しい何かにつなげていくアイディアを得ることを目的としています。対象者は、各旅館の調理担当者をはじめ、近隣でお店を営む方や、地域のお母さんたち。コーディネートは、庄内地域で食にまつわる活動をする小野 愛美さんです。
湯田川温泉つかさや旅館の厨房で、実技講習と試食会を行い、湯田川地域の季節の食材を活かしたアルザス料理の作り方を教えていただきました。メニューの説明を終え調理がはじまると、場の空気は一気に引き締まり、たくさんのお料理を目にも止まらぬスピードで仕上げていきます。参加者は目の前でシェフの手さばきを見ながら、そのスピード感に置いてかれまいと積極的に手を動かしました。
長野県は全国的に見ても、食材に恵まれた土地。「渋温泉食堂gonki」では、アルザス料理だからといって特別な食材を用意するのではなく、身近にあるお野菜や山菜などの山の幸、イノシシをはじめとするジビエなどを提供しています。食材の面では山を背にした湯田川温地区と共通する部分があり、どのように活用していくのかという点で大きな学びがありました。いくつかのお料理を紹介していきます。
お店名物のイノシシのリエットを湯田川でもつくってくださいました。イノシシの肉を柔らかくなるまで煮込み、ペーストにしてから、こんがりと焼いたパンにのせていただく一品。味付けは塩だけというのが信じられないほど、シンプルながらしっかりとした味わい。岸田家のお子さんたちも大好きなんだとか。
庄内では豚肉を食す文化がありますが、アルザス料理でもよく使用する食材だといいます。豚肉を酒粕で味付けして、バターでソテー。それだけでも十分美味しそうですが、細切りにして短時間茹でたシャキシャキのジャガイモを乗せ、仕上げにふきのとうを散らします。酒粕の新しい使い方を発見しました。
そば粉でつくるガレットは、春菊や水菜など食感のいいお野菜の上に、シシ肉とあさつきをのせ、つかさや旅館の女将特製のばんけみそで味付け。湯田川の先にある田川地区はそばの栽培が盛んな地域なので、田川のそば粉を使用したメニュー開発を考えるのも面白いかもしれません。
カルガモは、庄内柿とあわせてサラダに仕立てます。干し柿を一口サイズにカットしたら、お酢とあわせてビネグレットソースに。焼いた鴨の脂には、うまみがぎゅっと詰まっているので、オイルとして使用できます。調味料は最小限に、素材を余すことなく使う調理方法は、前回の北沢先生の教えにも通ずるところがありました。
研修は説明を含め4時間と限られた時間でしたが、みるみるうちにたくさんのメニューが完成しました!
豚肉、人参、葱、筍の水煮を味付けして白ワインで蒸し焼きに。
ジュニパーベリーやローリエ、白ワインの香りが爽やか。
じゃがいもと葱のポタージュは、寒い季節にうれしい味わい。
葱が苦手な参加者も、これなら美味しいと感動していました。
さっくりとしたパイに包まれた豚のテリーヌ。添えるのは山うどとこごみのピクルス。
サゴシとじゃがいものテリーヌ。庄内の白身魚もテリーヌにアレンジできそう。
続いてキジのテリーヌ。同じテリーヌでも、食材によってさまざまなバリエーションがうまれます。
筍にばんけみそを塗って、豚肉で巻いたものをフリットに。自家製マヨネーズでいただきます。
季節の山菜 うるいは、細く割いてサラダに。イノシシ肉の重厚感を、マスタードがさっぱりさせてくれる。目玉焼きにクルトンを乗せたスペシャルなサラダ。
調理が終わって和やかな雰囲気の中、参加者の質問に答える岸田さん。
どのメニューも驚くほど美味しく、参加者は感動するばかり。湯田川温泉の各お宿で提供しているお料理は和食がメインですが、岸田さんから教わったアルザス料理の中には、すぐに実践できる学びも多くありました。それから何より、地の食材を生かすアイディアの種を受け取りました。
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- 湯田川温泉観光協会
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- 湯田川に住み、湯田川を愛している旅館の仲間たち
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