新緑の羽黒山へ
5月のよく晴れたある日、私はひとり羽黒山へ行くことにした。
この地に移住して早くも1年が経った。その存在が当たり前になっていていたけれど、
初夏の羽黒山はとびきり美しいと聞いた。
鶴岡市内から30分程車を走らせ、羽黒山参詣道の入り口に到着。
『令和三年出羽三山丑年御縁年』と書かれた看板が目に入り案内を読む。
なんでも十二年に一度の丑年に参詣すれば、十二回お参りしたのと同じとされ、大変なご利益があるそうだ。
入り口の鳥居をくぐると世界は一瞬にして変わり、空は緑に覆われカエルの合唱に包まれた。続いていく石段、眩いほどの木漏れ日、国宝の五重塔に、天然記念物の杉並木。
生まれたばかりの緑を、私よりもずっとずっと永く生きている杉の木々を、ゆっくり愛でて歩いた。写真を撮りながら少しずつ進むわたしを、楽しそうに笑うカップルが追い越していく。鳥の声、風の音、虫の羽音、新緑の青々しさに息を飲む。
ひとり旅が好きだ。
誰かと一緒に旅をするのはもちろん楽しいけれど、
身も心も癒される旅をしたいと思うなら断然ひとりがいい。
自分のペースで気の向くままに写真を撮れるし、誰もが目に留めないような風景だって、ひとりならずっと見ていてもいい。ひとり旅では、何もかもが自由だ。
ゆっくりと一段ずつ、永遠と続くようにも感じられる石段を登っていく。
どのくらい登っただろうか。
心が折れそうになる直前、いちばん急な坂の途中に「二ノ坂茶屋」があった。
へとへとのわたしは迷わず店内に入り、名物の力餅とお抹茶のセットを注文。
霧のかかった庄内平野を望む。風が吹き抜けていく。
お餅はあんこときな粉、やわらかいのに弾力がありよくのびる。
景色と一緒に味わって今まで食べたお餅のなかでいちばん美味しかった。
二ノ坂茶屋から頂上までは、あっという間に感じた。
鳥居をくぐり頂上に着くと、思いっきり息をして達成感を味わった。
体力に全く自信のないわたしでも頑張れば頂上までたどり着ける、1.7kmの道のり。
石段は全部で2446段だという。過去にこの石段を創った人々のことを想像する。
人が作ったはずのものが、もはや自然の一部となってそこにある姿がとても美しかった。
下山の楽しみは石段の絵柄探し。酒器に瓢箪、他にも色々あるらしい。
足元を見ながら進み入り口に戻った頃には、入山から2時間半が経過していた。
通常であれば往復90分程の道のりと聞いていたので、これは随分とゆっくり歩いたものだと思った。
羽黒山・月山・湯殿山を総称して出羽三山といい、
この三山をめぐることは「生まれ変わりの旅」と言われている。
生まれかわりの旅では、羽黒山が現世、月山が前世、湯殿山が来世という3つの世界を表し、羽黒山、月山、湯殿山の順番で巡礼するのが一般的だという。
次回は月山へ行こう。せっかくの出羽三山丑年御縁年、前世と来世も巡ってみよう。
◯アクセス情報
【車利用】
・湯田川温泉から約26km 40分程度
・山形自動車道鶴岡ICから鶴岡・羽黒線経由で約10km
・庄内あさひICから約15km
・庄内空港から約30km
【バス利用】
・鶴岡市から庄内交通バス羽黒山行きで50分→終点下車
・表参道の石段を登る場合、又、国宝羽黒山五重塔を拝観する場合は、同バスで随神門下車
出羽三山神社
http://www.dewasanzan.jp
二ノ坂茶屋(水曜日、冬季休業)
https://tabelog.com/yamagata/A0603/A060302/6005588/
- ・投稿者の名前:
- すずき まき
- ・プロフィール:
- 写真家。2020年、生まれ育った横浜市から鶴岡市にiターン移住。 温泉と猫をこよなく愛している。
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