大山 出羽ノ雪の酒造り
湯田川温泉から車で10分程の距離にある鶴岡市大山地区では、江戸時代から酒作りが盛んに行われ、幾つもの酒造が軒を連ねていました。現代ではその数は減ってしまったものの、大山地区には庄内を代表する酒造が点在し、蔵人たちは日本酒文化を脈々と繋いでいます。月山・朝日山系の山々から流れる清らかな水と庄内平野の良質米に恵まれた美味しい日本酒。その酒造りの現場を訪れました。
株式会社 渡會本店
大山の土地で、400年余の間、継承された出羽ノ雪の酒業。今、そこに若いセンスと情熱が加わり「温故知新・不易流行」をキーワードに、召し上がる方々すべてに「より深い感銘」を与える酒づくりを目指している。
日本酒の仕込みが始まる11月。朝8時の訪問時には既に窯に火が入り、驚くほど大きなせいろで酒米が蒸されています。一見、炊いているのかと思いきや、この工程では、お米のでんぷんを生の状態から発酵が起こりやすい状態に変化させているそうです。炊いたお米は粘りが出ますが、蒸したお米は表面が硬く、中だけが柔らかくなるため粒同士がくっつきにくく、お米に沢山の水分を吸わせることが出来るという理由があるといいます。
この日蒸していた酒米は、『出羽燦々』『出羽きらり』『改良信交』の三品種。こうすることで発酵しやすい状態になるばかりではなく、高温でお米が消毒されます。天井まで蒸気が満ちている室内。気温の低い真冬にはもっと真っ白になるんだとか。どんなに寒くても蒸気は高温で汗をかきながらの作業。お酒造りには、タイミングや計量など繊細な作業と、豪快さを必要とする体力仕事のどちらも必要なんですね。
蒸米は布の上に広げ、熱い酒米をなんと素手で一定の温度まで冷ましていきます。酒米は磨かれ、丸くて小さな粒であることが分かります。普段食しているごはん用のお米と比べると随分小さく、贅沢に削って使用されているのです。一口頂いてみると、これは確かに外が硬く中は柔らかいはじめての食感。この後、室(むろ)と呼ばれる部屋で麹造りが行われ、酛摺り、添え仕込み、本仕込みへと進んでいきます。
長い工程を経てようやく、酒絞りが行われ新酒を味わうことが出来るのです。いつも何気なく飲んでいる日本酒もこのような長い工程を経て造られていると思うとその有り難みが増しますね。室(むろ)を見学させて頂いた際には、麹の香りでなんだかほろ酔い気分に。普段なかなか足を踏み入れることのない酒造を見学させて頂き、お酒作りの原点に触れることが出来ました。
国内有数の米どころ、庄内平野。日本酒好きなら訪れる価値のあるスポットだと言えます。酒造に併設された『出羽ノ雪 酒造資料館』では一般の方も入場料100円で資料館を見学出来る他、直売所を併設しているので、是非訪れてみてはいかがでしょうか。(新型コロナウイルスの影響で変更になる場合があります。訪問の際には、予めお問い合わせください。)
◯information
出羽ノ雪 酒造資料館
開館時間:8:45〜16:30
山形県鶴岡市大山二丁目2番8号
0235-33-3262
- ・投稿者の名前:
- すずき まき
- ・プロフィール:
- 写真家。2020年、生まれ育った横浜市から鶴岡市にiターン移住。 温泉と猫をこよなく愛している。
- ・SNSやホームページへのリンク系:
- https://www.instagram.com/maki.suzu.ki/