- 2021.10.03
- 月山 弥陀ヶ原の湿原
- 出羽三山のひとつである月山。その紅葉がとても美しい季節になった。 月山は初心者にも比較的登りやすい山だと言われていて、登山が好きな人にとって、9月の鶴岡は旅の目的地として最適だ。いくつかの登山口がある中で、月山北面の八合目まで車で行くことが出来る「羽黒山口コース」は最も湯田川温泉からアクセス良好。八合目から頂上までへは片道3時間程度の登山コースが整備されていて、九合目には山小屋もあるので休憩をしながら登山を楽しむことが出来る。頂上の標高は1984m。天気が良ければ、鳥海山や朝日連峰などの山々の美しい景色に出会えるのだ。 ただ、旅先での登山はなかなかハードルが高いものだ。私が湯田川温泉に宿泊するなら朝と夜の食事、そして温泉をゆっくりと存分に楽しみたいし、宿での滞在時間を満喫したい。その上、いくつかの観光スポットを周りたいとなればもう少し気軽に行けるルートを選択するのもいいだろう。月山には登山をしない方でも十分に楽しめるハイキングコースがある。それが「弥陀ヶ原の湿原」だ。 自家用車、レンタカーなど車での移動手段がある方は、「月山八合目駐車場」を目的地にセット。湯田川温泉から1時間程度の道のりだが、そのうち30分くらいは山道なので、車酔いをする人は事前に酔い止めを飲んでおくとことをお勧めする。(実際に私が訪れた際には、助手席に座っていた友人が車酔いをして八合目に着いた時にはふらふらになっていた。) また、公共交通機関を利用する方は、鶴岡駅近くの「エスモールバスターミナル」からバスに乗車することが出来るが、運行本数に限りがあるので注意が必要。 8合目の駐車場には「月山八合目レストハウス」があり、その横道を入っていくと弥陀ヶ原の湿原が広がっている。夏には一面湿った美しい緑の風景を楽しむことが出来、ニッコウキスゲやミズバショウなど数多くの高山植物が美しい。そして秋には紅葉した草木辺り一面黄金色の絨毯のように映り、季節によりその表情は様々だ。 弥陀ヶ原の標高は1400m付近と高いので、庄内平野が一望出来、時に雲がかかっていても空の上に浮かんだ天国の回廊のように感じる。一周約60分のハイキングコースは「空中の自然散策」とも言われていて現実離れした風景と綺麗な空気に触れる貴重な体験になるだろう。登山道に比べると気軽なハイキングコースではあるものの、足元は滑りやすく、また不安定なのでスニーカーやトレッキングシューズの着用は必須。おにぎりやサンドイッチなどの軽食を用意して、空の上でのピクニックも楽しい。 自然の中に入りリフレッシュをすると、日々の疲れが剥がれ落ちていくようで不思議なものだ。山や温泉など地球の恵みに触れることで私たちは本来のパワーを取り戻せるのかもしれない。
- 2021.05.25
- 新緑の羽黒山へ
- 5月のよく晴れたある日、私はひとり羽黒山へ行くことにした。 この地に移住して早くも1年が経った。その存在が当たり前になっていていたけれど、 初夏の羽黒山はとびきり美しいと聞いた。 鶴岡市内から30分程車を走らせ、羽黒山参詣道の入り口に到着。 『令和三年出羽三山丑年御縁年』と書かれた看板が目に入り案内を読む。 なんでも十二年に一度の丑年に参詣すれば、十二回お参りしたのと同じとされ、大変なご利益があるそうだ。 入り口の鳥居をくぐると世界は一瞬にして変わり、空は緑に覆われカエルの合唱に包まれた。続いていく石段、眩いほどの木漏れ日、国宝の五重塔に、天然記念物の杉並木。 生まれたばかりの緑を、私よりもずっとずっと永く生きている杉の木々を、ゆっくり愛でて歩いた。写真を撮りながら少しずつ進むわたしを、楽しそうに笑うカップルが追い越していく。鳥の声、風の音、虫の羽音、新緑の青々しさに息を飲む。 ひとり旅が好きだ。 誰かと一緒に旅をするのはもちろん楽しいけれど、 身も心も癒される旅をしたいと思うなら断然ひとりがいい。 自分のペースで気の向くままに写真を撮れるし、誰もが目に留めないような風景だって、ひとりならずっと見ていてもいい。ひとり旅では、何もかもが自由だ。 ゆっくりと一段ずつ、永遠と続くようにも感じられる石段を登っていく。 どのくらい登っただろうか。 心が折れそうになる直前、いちばん急な坂の途中に「二ノ坂茶屋」があった。 へとへとのわたしは迷わず店内に入り、名物の力餅とお抹茶のセットを注文。 霧のかかった庄内平野を望む。風が吹き抜けていく。 お餅はあんこときな粉、やわらかいのに弾力がありよくのびる。 景色と一緒に味わって今まで食べたお餅のなかでいちばん美味しかった。 二ノ坂茶屋から頂上までは、あっという間に感じた。 鳥居をくぐり頂上に着くと、思いっきり息をして達成感を味わった。 体力に全く自信のないわたしでも頑張れば頂上までたどり着ける、1.7kmの道のり。 石段は全部で2446段だという。過去にこの石段を創った人々のことを想像する。 人が作ったはずのものが、もはや自然の一部となってそこにある姿がとても美しかった。 下山の楽しみは石段の絵柄探し。酒器に瓢箪、他にも色々あるらしい。 足元を見ながら進み入り口に戻った頃には、入山から2時間半が経過していた。 通常であれば往復90分程の道のりと聞いていたので、これは随分とゆっくり歩いたものだと思った。 羽黒山・月山・湯殿山を総称して出羽三山といい、 この三山をめぐることは「生まれ変わりの旅」と言われている。 生まれかわりの旅では、羽黒山が現世、月山が前世、湯殿山が来世という3つの世界を表し、羽黒山、月山、湯殿山の順番で巡礼するのが一般的だという。 次回は月山へ行こう。せっかくの出羽三山丑年御縁年、前世と来世も巡ってみよう。 ◯アクセス情報 【車利用】 ・湯田川温泉から約26km 40分程度 ・山形自動車道鶴岡ICから鶴岡・羽黒線経由で約10km ・庄内あさひICから約15km ・庄内空港から約30km 【バス利用】 ・鶴岡市から庄内交通バス羽黒山行きで50分→終点下車 ・表参道の石段を登る場合、又、国宝羽黒山五重塔を拝観する場合は、同バスで随神門下車 出羽三山神社 http://www.dewasanzan.jp 二ノ坂茶屋(水曜日、冬季休業) https://tabelog.com/yamagata/A0603/A060302/6005588/