- 2023.10.20
- 湯田川温泉神楽
- 「湯田川温泉神楽」は、湯田川温泉で永きに渡り親しまれてきた神楽で、その起源は定かではないが、盛んに演じられるようになって400年は経つといわれています。湯田川温泉の神様がまつられているという由豆佐売神社では、土用の丑の日にお湯が生まれ変わることを祝う「温泉清浄祭」が行われます。昔からこの日に湯治すると風邪をひかないといわれ、「丑湯治(うしとうじ)」とも呼ばれています。そして毎年、土用の丑の日とその前日の2日間、温泉街では湯田川温泉神楽が上演されます。 土用の丑を目前にした日の夜、湯田川温泉の奥にある湯田川温泉会館から、お囃子の音が聞こえてきました。コロナ禍においてずっと触れることのなかった懐かしいお祭りのお囃子。そのリズムに引き寄せられるように中に入ると若い人から幅広い年代の男衆が湯田川神楽の練習をしていました。その中心で音頭を取っているのは、湯田川温泉神楽保存会の会長の大井康博(72歳)さん。湯田川温泉神楽保存会は昭和30年に発足し、そのメンバーは現在20代から70代の25名で活動しています。メンバーは全てここ湯田川に住んでいて、親子で参加している人も4組います。 神楽の練習は基本的に月に一度。日中はそれぞれが仕事をしているので、練習が始まるのは、いつも夜の7時半頃からで12〜13人が集まります。かつては、2月に寒稽古を1週間していたこともあったとか。現在「湯田川神楽」の台本は、獅子舞、鳥刺し舞、吉原踊り、神楽囃子の4本。「とにかく愉快な神楽で、笑いが溢れるのはこの『湯田川温泉神楽』だけではないかな。昔は、温泉旅館を神楽がまわると、子供がずっとついてきたものだった」と大井さんはいいます。 「ちょんべ」と呼ばれる「ひょっとこ」を演じる村上光央さん(48歳)は28歳の頃から演じてきました。もの心ついた子供のころから湯田川神楽を楽しみにみてきたという村上さん、まさか自分が「ひょっとこ」を演じることになるとは思っていなかったそうです。それまで永きに演じてきた佐々木浩さんが高齢になり、大井さんにスカウトされたのです。やればやるほど、どんどん「ちょんべ」に自分自身が引き込まれていきました。「湯田川神楽はふざけたいやらしさ、邪道、品がないとかいわれることもあるが、一度みた人にはセンセーショナルで忘れられないはず」と村上さんはいいます。 三味線の伊藤俊一さん(45歳)も、やはり26歳の頃笛から神楽のメンバーに加わりました。今はまだ先輩である高橋吉和さんの姿をみながらその技を受け継いでいます。湯田川神楽のお囃子には実は楽譜がありません子供の頃から聞いてきているので、耳に音もリズムも残っているのだとか。 湯田川温泉入口の大提灯が灯る頃、頭に吉原かぶりの豆しぼり、腰に貝ノ口男結び、そして背中に大きく「湯田川」足元におかめとひょっとこの浴衣がなんとも粋な男衆が一人、二人と正面湯の前に集まってきました。一同は正面湯から由豆佐売神社へと向います。 由豆佐売神社に「湯田川温泉神楽」が神事として奉納されます。神主さんが見守る中、お囃子と共に凛とした獅子が舞います。そこにひょっとこの姿はありません。 神社での奉納の舞が終わると一行は、温泉会館に戻り陽が落ちるのを待ちます。夜8時になると正面湯の前には、どこからともなく、人が集まってきました。 獅子が豪快にそして凛として舞います。と、そのうち獅子が眠りにつくと、どこからともなくちょんべ(ひょっとこ)が現れます。そのふるまいは滑稽でその場の観客を一気に引き込みます。眠りから目覚めた獅子が豪快に舞観客のすぐ目の前にやってきます。笛、太鼓、しゃみせん、楽器同士の呼吸が獅子とひょっとこの舞を引き立てます。こんなにも楽しく、観客と一体となる神楽があるでしょうか。実は、このちょんべ(ひょっとこ)の悪ふざけは、災いを意味するもので、それを獅子が退治することで、無病息災を願うというストーリーになっているのです。 地域に祭りがあり、若者がそれを盛り上げているところには活気があります。地方の人口減少で祭り自体が減ってきている中、「湯田川温泉神楽」はここ湯田川温泉に暮らす人にも、訪れる人にも活気を与えてくれる存在となっています。湯田川温泉の湯も魅力ですが、この「湯田川温泉神楽」を一度は見ていただきたいと思います。
- 2021.12.30
- 加茂水族館
- クラゲの展示種類数で世界一を誇る水族館『加茂水族館』は、湯田川温泉から車で約20分の距離でアクセスもしやすく、家族連れにもお勧めの観光スポットだ。日本海に面した岬にたち、船のような外観の『加茂水族館』は、『クラゲドリーム館』の愛称で雑誌やSNSでも大人気。Instagramで#クラゲドリーム館を検索すると、ライトアップされたクラゲの巨大水槽の幻想的な写真が5000件以上もヒットする。 見所は巨大水槽だけではなく、館内には色とりどりのクラゲが展示されている。その種類は実に50種類以上だという。姿・形も様々で、なかには「こんな生き物がいたなんて!」と驚くような出で立ちのクラゲも。海の世界の神秘を垣間見るようだ。ゆらゆらとたゆたう姿は、ゆったりとしていて、気持ちまで穏やかになっていく。 クラゲ展示の他に、子供に大人気の催しも。冬季を除く、通常期間(4月1日〜11月30日)『ひれあし広場』では、アシカやアザラシの出演するショーを楽しめる。ひれあし類の特徴を、可愛く、面白く解説してくれる学びの多いプログラムで、開催時間になると広場は沢山の家族連れやカップルで賑わっている。(※天候や動物の状況により中止になる場合もあるので、要確認)大規模な水族館とは違い、海の生き物との距離が近いのも嬉しいところ。 『加茂水族館』に併設された『魚匠ダイニング 沖海月』では本格的な魚料理が楽しめると評判で、庄内で獲れたこだわりの地物鮮魚を提供してくれる。本物のクラゲを麺に練り込んだ名物の『クラゲラーメン』や、フグや鱧などの高級食材もカジュアルに楽しめる。海の生き物を見て楽しんだ後には、食べて楽しむ。美味しいだけではなく、食育にもなり、ここにしかない体験としての価値がある。 GWやお盆などの繁忙期には、入場制限があるので、事前の確認を。『鶴岡市立加茂水族館』は、鶴岡観光名所の代表的なスポット。是非一度は、訪れて頂きたい。 加茂水族館 公式HPへ:https://kamo-kurage.jp
- 2021.10.31
- 藤沢周平記念館
- 鶴岡出身の作家である藤沢周平(1927-1997)。『蝉しぐれ』や『橋ものがたり』など人気作品の生みの親であり、時代小説、歴史小説、伝記、随筆、俳句など様々なジャンルを書いた文筆家である。そんな藤沢周平の作品を保存し、彼の生涯を紹介する『鶴岡市立藤沢周平記念館』は全国の文学好きに是非訪れて頂きたい観光スポットだ。藤沢文学の世界を通し、鶴岡・庄内の豊かな自然と歴史ある文化に触れてみてはいかがだろうか。 『藤沢周平記念館』は、かつて鶴ヶ岡城があった鶴岡公園の中に、みどり豊かな自然にかこまれて佇んでいる。その敷地内には東京の旧邸にあった庭木や屋根瓦、塀に使われていた大谷石などを配しており、ガラス張りの館内に入ると、窓の外の景色が美しく切り取られ、四季の移りかわりを眺めることができる。 【鶴岡公園の大きな鳥居を抜けると正面には荘内神社がある。その左手に位置するのが『藤沢周平記念館』】 通常、常設展示と企画展示が開催されており、常設展示は第1部〜3部で構成されている。<第1部 「藤沢文学」と鶴岡・庄内 / 第2部 「藤沢文学」の全て / 第3部 「作家・藤沢周平」の軌跡>なかでも、彼が多くの作品を執筆した自宅書斎を再現した展示は、今まさにペンを置いたところのような雰囲気で、藤沢氏が生きてそこにいるかのようにも感じられ、またどんな本を本棚に並べていたんだろうなどと興味深く見入ってしまう。企画展示はその時々に内容が異なるので、何度でも訪れたい。 【四季を感じる鶴岡公園の風景。春には桜、秋は紅葉が美しい。】 『藤沢周平記念館』の他にも、鶴岡市内の25カ所が『藤沢作品ゆかりの地』として選定されている。25カ所の中には、地元の人しか知らないような隠れた名所もあり、これを頼りに小説の舞台となった鶴岡の原風景をめぐるのもまた面白い。 【鶴岡市内25カ所に設置される案内板。写真は善宝寺のもの。】 ゆかりの地 第4番『花のあと-以登女お物語』に登場する湯治場として湯田川温泉も選定されている。彼が22歳で教職に就いた際に赴任したのが湯田川村立(現鶴岡市)湯田川中学校であったことや、湯田川の旅館を定宿として利用していたこと、人気作品である『たそがれ清兵衛』の映画ロケ地として湯田川温泉の由佐売神社(ゆずさめじんじゃ)が使用されるなど関わりも深い。湯田川温泉に宿泊し、藤沢周平の世界に浸る文学旅もここにしかない楽しみ方のひとつだ。
- 2021.10.18
- 旅のしおり<お土産編>
- お土産を選ぶ時間は、旅の楽しみのうちのひとつだ。その土地の文化を垣間見ることが出来るし、大切な誰かの顔を思い浮かべ、これだという物に出会った時には何ともいえない嬉しさがある。人との出会いは一期一会だが、物との出会いもまた同じ。楽しい滞在時間を過ごした後には、ここにしかない旅の思い出を持ち帰りたい。そこで今日は湯田川温泉からアクセスしやすいお土産屋さんのインフォメーションを記載していく。 <湯田川温泉でお土産を探すなら> 【ぱろす湯田川】 湯田川の温泉街をまっすぐに奥まで歩いて行くと『ぱろす湯田川』が見えてくる。湯田川名物のひょっとこ饅頭や、だだちゃ豆ソフトクリームが人気のお土産屋さんだ。お散歩がてら、お宿からふらっと歩いて訪れるのに丁度いい距離感。湯田川温泉にはコンビニがないので、缶ビール、ジュースにお菓子などを買いたい時には『ぱろす湯田川』へ。レトロな見た目も可愛く、軒先のベンチで休むこともできる。 〒997-0752 山形県鶴岡市湯田川 甲31-2 【船見商店】 『入浴券あります』の看板が目印の船見商店。正面湯に立ち寄り入浴をする際には、ここで入浴券を購入し、正面湯の鍵を開けてもらう。(※新型コロナウイルスの為、現在は入浴に制限あり。)昔ながらの商店で、お店のおかみさんとの談笑を楽しむのも温泉街ならでは。春には湯田川孟宗の販売もしているが、それ以外の時期には湯田川孟宗の缶詰がお勧め。温泉街のレトロな雰囲気が好きな方は訪れてみると楽しいだろう。 〒997-0752 山形県鶴岡市湯田川 乙79 <鶴岡市内でお土産を探すなら> 【庄内観光物産館】 お酒、銘菓、お肉にお魚、庄内のお土産が何でも揃う『庄内観光物産館』。鶴岡市ICのすぐ近くにあり、湯田川温泉から車で10分程度とアクセス良好。お食事処や軽食の販売もあるのでドライブのひと休みにも最適だ。 〒997-0851 山形県鶴岡市布目中通80-1 庄内観光物産館HPへ 【清川屋】 山形県内に11店舗ある『清川屋』は、食品を中心にオリジナル商品・厳選されたセレクト商品が並ぶお土産屋。鶴岡市内には、『鶴岡本店』『HOUSE清川屋』『鶴岡インター店』の3店舗がある。今年の7月にリニューアルオープンした『鶴岡インター店』は、ギフトショップ、カフェ、高級食パン専門店の3つを併設している。 <鶴岡本店> 〒997-0015 山形県鶴岡市末広町5-1 鶴岡駅前マリカ西館1F <HOUSE清川屋> 〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-13 鶴岡商商工会議所会館1F <鶴岡インター店> 〒997-0857 山形県鶴岡市美咲町33-21 清川屋HPへ 【木村屋 ファクトリーストア】 鶴岡の伝統菓子で創業130年以上の歴史を持つ『木村屋』のファクトリーストア。「古鏡」や「マロン」など、鶴岡土産の定番ともいえる昔ながらのお菓子をはじめ、数多くの和洋菓子が揃う。工場直営のファクトリーストアでは、焼きたてのパンが並ぶ。 〒997-0052 山形県鶴岡市覚岸寺 水上249-1 木村屋HPへ 【フルーツショップ青森屋】 厳選されたフルーツが並ぶ『フルーツショップ青森屋』は行列の出来る人気店だ。お目当ては、フルーツを使用したタルトやフルーツサンドなどのスイーツ。季節の果物をふんだんに使ったスイーツは贅沢そのもの。併設されたカフェでも同様のメニューをいただくことができる。 〒997-115 山形県鶴岡市末広町7-24 フルーツショップ青森屋HPへ <お野菜・果物・ジュースなど、生鮮食材は産直で> 【もんとあ〜る 白山店】 湯田川温泉の一番近く。車で5分程度の距離にJA鶴岡 ファーマーズマーケット『もんとあ〜る白山店』がある。鶴岡産の採れたて新鮮なお野菜、果物が手に入る他にも、ソフトクリームやコーヒーなどを販売している。配送サービスを利用してお土産を送るのも便利。鶴岡の在来野菜であるだだちゃ豆・藤沢かぶを買いたいならここがお勧め。(だだちゃ豆は7月後半〜9月、藤沢かぶは11月あたりに店頭に並ぶ。) 〒997-0841 山形県鶴岡市白山西野191-2 【産直 あぐり】 鶴岡市の櫛引はフルーツの栽培が盛んな地域。さくらんぼ、ぶどう、りんご、梨、ラフランスなど一年を通して様々な種類の果物が採れる。そんな櫛引地区にあるマーケットの『産直あぐり』では、採れたての新鮮なフルーツが手に入る。果物を使ったジャムやジュースなどもお土産に最適だ。 〒997-0332 山形県鶴岡市西荒屋杉下106-3 【ふじしま市場 たわらや】 庄内平野は日本有数の穀倉地帯で、その中でも特に田んぼの多い藤島地区にあるマーケット『たわらや』。鶴岡でお米やお餅を購入したいならここがお勧めだ。特に新米の時期には、収穫したてのお米が店内に並び、玄米・精米などの好みを選んで購入することが出来る。 〒997-0758 山形県鶴岡市藤浪2-93 <最後に> 今回は、湯田川温泉から行きやすい代表的なお土産屋さんに絞って紹介した。鶴岡市には沢山の魅力的なお店があるので、宿でお勧めを聞くのもよし、ふらっと車で走ってみるのもよし。ぜひ鶴岡の思い出を持ち帰っていただきたい。
- 2021.10.10
- 未来の世を表す山 湯殿山
- 日本有数のパワースポットである出羽三山は、羽黒山、月山、湯殿山の総称であり、古くからこの3つを巡ることで大変なご利益があると言われている。と、よく知ったように書いてみたものの、鶴岡に越してくるまで山とは無縁の生活を送ってきた私が、急に出羽三山のご利益について話すのは少々無理があるだろう。正直に申し上げると、「パワースポット」や「ご利益」という言葉については、なんとなく信じている程度で、信仰心や具体的に説明出来る程の経験はない。 それでも、せっかく庄内に来たならご挨拶をしておこうという気持ちでこの3つの山を度々訪れては少しずつ理解を深めているところだ。 出羽三山のうち羽黒山は現在、月山は過去、湯殿山は未来を表していると言われ、この三つの山を巡ることは「生まれ変わりの旅」と言われている。3つの山は連なり、羽黒山は414m、月山は1984m、湯殿山は1504mとそれぞれ高さが違うので、離れてみるとどこか三兄弟のようで温かみがある。 私のような者であっても、これらの山に入る時、広大な自然に身を委ねることで自身のちっぽけさに気付かされ、草木の強さに圧倒され、川のせせらぎに心洗われ、そして市街地とは異なる新鮮な美しい空気に触れることで内側から生まれ変わるような気持ちになることを確かに実感している。 今回テーマにした湯殿山にはこれまでに2度訪れたが、「語るなかれ」「聞くなかれ」と言われ、文章中は勿論のこと、人に話すことも禁止され多くを語ることは決して許されない。ここで見たものについては胸に秘めておくことにして、旅のインフォメーションについて書いていく。湯殿山神社を参拝する際には、まず目的地に『湯殿山神社大鳥居』をセットし、鳥居横の駐車場を目指す。湯田川温泉からは約45分程度の道のりで、そこからは参拝バスに乗り換えて本宮へ向かうことになる。参拝バスの運行本数に限りがあるので、観光として訪れるならば所要時間は1時間半〜2時間くらいみておくと良いだろう。 バスを降りてから本宮までは徒歩5分の道のりだが、坂道なのでスニーカーが望ましい。そして参拝の際には、履物を脱ぎ裸足になるので、足を拭くためのタオル等を持っていくことをお勧めする。少ない情報ではあるが、私が書けることはこの程度である。旅をするなら、その土地にしかないものに出会いたいと望むものだ。湯殿山に行けば、日本全国どこを探してもここにしかない経験が出来ることは間違いないだろう。「語るなかれ」「聞くなかれ」の湯殿山。この現代で、インターネット上にこれといった情報が落ちていないことはむしろ貴重である。ヴェールに包まれた神秘性、それが湯殿山の魅力なのだ。