仙荘 湯田川
「今日もあなたに素敵なことがありますように。」ロビーに明るい声が響いた。満面の笑みでお客様をお見送りするのは、女将のひろみさん。傍らには猫の“なび”がいて、つぶらな瞳でエントランスから外の景色を眺めている。
これが、『仙荘 湯田川』のいつもの風景。韓国から日本に来て30年あまり、旅館の仕事一筋で生きてきた女将ひろみさんが、7年前にはじめた『仙荘 湯田川』は、一度訪れるとまた来たくなるリピーターに愛される宿だ。
何と言っても一番の魅力は女将の人柄だろう。明るく楽しいおしゃべりで旅気分を盛り上げたかと思えば、滞在中は気兼ねなく過ごせるようにと、すっとカウンターの裏へ入っていく。その距離感がとても心地よく、決して型にはまることのないオリジナルのおもてなしは、ここに訪れる一人一人への思い遣りに満ちていると感じるのだ。
お客様にとって本当に過ごしやすい快適な空間を作ることを第一に考えられている。訪れる人々が日々の疲れから解放され、思うがまま、自由に、気楽に過ごしてもらえるように。
ひろみさんが宿泊業と出会ったのは、今から25年以上前。隣町の酒田にある温泉宿で働きはじめたことをきっかけに、温泉文化の魅力を知ったという。旅館で働きながら日本語を学び、休みの日には、近隣の湯野浜温泉・あつみ温泉は勿論のこと、その他にも東北6県の様々な旅館を訪れた。日本の温泉文化は世界一だと感じた一方で、決して居心地が良いとは言えないお宿もあり、反面教師になったことも。こうした経験のひとつひとつが『仙荘 湯田川』のおもてなしに表れている。
「感謝、感謝。まだまだ歴史の浅いこの宿を選んでくれたことに感謝。30年間日本でお世話になったので、日本のために何かしたいという気持ちでお客様をお迎えしています。」そう話す女将の表情はとても明るく、優しい。この笑顔が印象に残り、ついまた会いたくなるのだろう。
お花、植物、囲炉裏に火鉢。館内にはお客様からもらった品々が並んでいて、そのファンの多さが伺える。望遠鏡で星を見たり、ハンモックに揺られたりと他の旅館にはない楽しみもあり、お子様の「仙荘に行きたい!」というリクエストでいらっしゃるご家族もいるという。
『仙荘 湯田川』を語るときに忘れてはいけないのが猫のなび。現在は2代目のナビが若旦那としてお客様をお迎えしている。その可愛さにはファンも多く、Instagramのフォロワーは1万人超え。横浜に住まうフォロワーの方がなびに会いに湯田川温泉を訪れたこともあった。看板猫のなびは、小さくて丸い身体に宿したエネルギーと宝石のように輝く瞳で来る者を癒している。
ひろみさんとなび、そして湯田川温泉のお湯に、食べきれないほどボリュームのある和食のお料理。まだ『仙荘 湯田川』に行ったことがないという人は、是非一度泊まってみてはいかがだろうか。きっと湯田川温泉の新たな一面に出会えるはずだ。
- ・投稿者の名前:
- すずき まき
- ・プロフィール:
- 写真家。2020年、生まれ育った横浜市から鶴岡市にiターン移住。 温泉と猫をこよなく愛している。
- ・SNSやホームページへのリンク系:
- https://www.instagram.com/maki.suzu.ki/